ページトップへ戻る

水道工事の持続力

小規模簡易DB発注方式で、管路更新工事を発注しやすくする

― 概略設計と概算数量で発注し、契約後に現地を見て詳細設計。地元工事事業者とともに、管路更新を止めない新しい進め方 ―

小規模簡易DB発注方式で、管路更新工事を発注しやすくする

この記事でわかること

水道管路の更新を進めやすくする「小規模簡易DB発注方式」を、事業体の視点から解説します。概略設計と概算数量で発注し、契約後に受注した地元工事事業者が現地調査にもとづき詳細設計を行う仕組みです。発注者・工事事業者双方のメリット、詳細設計を支える設計支援ツール「PIPE-Pro」の位置づけ、無料Webセミナーの日程までをまとめました。

  • 小規模簡易DB発注方式とは何か(更新された定義と業務フロー)
  • なぜ管路工事では設計変更や手戻りが起こりやすいのか
  • 発注者(事業体)と受注者(地元工事事業者)の双方に、どのようなメリットがあるのか
  • 詳細設計を担う工事事業者を支える設計支援ツール「PIPE-Pro」の位置づけと、活用の仕方

※ お急ぎの方は、記事の最後にある事業体様向け無料Webセミナー日程だけでもご覧いただけます。

00 なぜ今、小規模簡易DBなのか

水道管路の更新は、待ったなしの課題です。一方で、設計・積算・発注・工事監督を担う技術職員の負担は年々重くなっています。地下埋設物の位置が正確に分からないまま詳細設計を進めることも多く、工事が始まってから設計変更が発生し、その対応に時間を取られるケースも少なくありません。

そこで、いま多くの事業体が注目しているのが、「小規模簡易DB発注方式」です。発注者が詳細設計の一部を簡略化し、概略設計図と概算数量で発注する。契約後には、受注した地元の工事事業者が現地調査にもとづいて詳細設計を行い、施工まで進める。こうした役割分担により、発注者と工事事業者の双方の手戻りを減らし、管路更新を進めやすくする発注方式です。

WATER KNOWLEDGE PARK は、水道を支える人が知識でつながるWebメディアです。本記事では、小規模簡易DBを難しい制度の解説としてではなく、「発注業務の負担をどう軽くし、地域の工事力をどう残すか」という視点でご紹介します。

はじめに、三つだけ質問させてください。

  • 管路更新工事の設計や工事監督を担う技術職員は不足していませんか?
  • 今は対応できていても、5年後、10年後も同じ体制を維持できそうですか?
  • 水道を将来にわたって持続させるために必要な管路更新を、着実に進められていますか?

小規模簡易DBは、単なる発注方式の変更ではありません。事業体の職員が設計業務に追われる働き方を見直し、地元工事事業者のノウハウを活かしながら、限られた人員でも管路更新を進めるための実践的な選択肢です。この記事では、この「小規模簡易DB」という発注方式について、その仕組みとメリット、詳細設計を支える設計支援ツールの活用まで、順を追ってご紹介します。

01 小規模簡易DB発注方式とは ― 概略で発注し、現地を見て詳細を決める方式

小規模簡易DBとは、小口径・比較的小規模な水道管路工事を対象に、発注者が詳細設計の一部(管割など)を簡略化して概算数量で発注し、契約後に受注者が現地調査にもとづいて詳細設計を行い、施工する発注方式です。工事の規模を変えず、現行の契約制度や業務の範囲内で導入し、地元工事事業者に発注することを想定しています。

「小規模簡易DB」は日本ダクタイル鉄管協会が推奨する発注の“進め方”です。一般的な大規模DB方式(設計施工一括発注)とは異なり、通常の管路工事に近い規模と入札方法で導入できる点が特徴です。

水道管路の設計は、地下埋設物などの埋設位置の把握が難しい中で実施されるため、工事発注後の設計変更が多く、その対応に多くの時間を費やしているという課題があります。本方式を導入することで、発注者の設計・積算業務を軽減し、受注者の手戻りを減らせるなど、双方の業務効率化が期待できます。

一方で、法定耐用年数を超えた水道管の割合は増加し、管路の更新率は低い水準にあります。更新が必要な管路が増えるなか、工事を計画し、設計し、発注する側の体制は次第に厳しくなっています。

小規模簡易DBの3つのポイント

  • 概算数量設計での発注により、発注者(事業体)の工事事務を軽減できます
  • 工事規模は現行と変えず、地元工事事業者の受注機会を維持できます
  • 入札方式は現行の制度を踏襲するため、新たな仕組みづくりは不要です

業務の流れはシンプルです。発注者は、詳細設計に代えて概略設計図書(工事概要図・概算数量設計書)で工事を発注します。詳細設計は、受注した工事事業者が現地調査を踏まえて実施し、監督員が承認します。工事完了後は、当初数量を完成数量で精算します。

本方式は、日本ダクタイル鉄管協会が事務局を務める「管路更新を促進する工事イノベーション研究会」が、管路更新を進めるための課題解決手法として提案したものです。第1期・第2期を通じて多くの委員事業体でモデル事業が実施され、導入マニュアルや設計の手引き類も整備されています。研究会に参画していない事業体でも採用が広がっています。

02 発注者のメリット ― 設計・積算と変更対応の負担を軽くする

詳細設計・積算にかかる時間を減らせる

発注者にとって大きいのは、発注前に担っていた詳細設計や管割、数量計算の一部を簡略化できることです。すべての管割や細かな数量を確定してから発注するのではなく、概略設計図書で発注するため、設計・積算にかかる時間を抑えられます。地下埋設物などの状況を事前にすべて把握することは難しく、既設管の情報が十分にそろっていない路線でも、少ない手間で発注できるようになります。

また、現地を確認したうえで詳細設計を行うため、工事開始後に図面と現場が合わず、大きな手戻りになるリスクを減らせます。加えて、工事中の設計変更や数量確認に追われる時間が減ることで、限られた技術職員でも、次の工事を設計・発注するための時間を確保しやすくなります。

早期発注・発注の平準化につなげやすい

設計・積算が短期間でできるため、工事の早期発注や発注時期の平準化が図れます。計画外の工事や緊急工事にも対応しやすくなり、限られた技術職員でも管路更新の執行を後押しします。地元工事事業者にとっても、年間を通じて受注機会が安定することは大きな意味を持ちます。詳細設計にかかる負担が軽くなることで発注時期を前倒ししやすくなり、複数の工事を計画的に発注できれば、年度内に業務が集中することを抑え、発注者・工事事業者の双方にとって進めやすい工程を組みやすくなります。

地元工事事業者の確保・育成にもつながる

現行の入札制度のまま、資格要件を変えずに発注できるため、地元工事事業者の受注機会を維持できます。漏水事故や災害時に真っ先に駆けつけてくれるのは、地域の工事事業者です。その体制と技術力を将来へつないでいくことも、本方式の重要な狙いです。

従来方式と小規模簡易DB(概算数量設計+工事事業者が詳細設計)の比較図

従来方式と小規模簡易DBの比較図

03 工事事業者のメリット ― 現場に合わせて設計し、手戻りを減らす

現地を確認してから、詳細を決められる

工事事業者にとってのメリットは、契約後に現地調査を行い、現場の状況を踏まえて詳細設計を作成できることです。地下埋設物や既設管の状況を確認しながら配管を検討できるため、現場に合わない図面のまま施工を進めるリスクを抑えられます。現場条件に合った配管にもとづいて材料を手配できるため、現場での材料の過不足も低減できます。

一方で、詳細設計を担うには、図面作成や数量計算に関する知識が必要です。施工経験は豊富であっても、設計業務には不慣れな工事事業者も少なくありません。そのため、小規模簡易DBを広げるには、工事事業者が設計業務に取り組みやすい環境を整えることが重要です。
また、地元工事事業者が設計から施工までを一貫して担うことは、会社としての技術力の向上につながり、地域の施工体制や技術を将来につないでいくうえでも、大きな意味があります。

04 導入のカギ ― 工事事業者の詳細設計を支えること

小規模簡易DBは、発注者の負担を軽くするだけでは成り立ちません。詳細設計を担う工事事業者が、現地調査から図面作成、数量確認までを無理なく進められることが前提です。導入を検討する事業体からも、「地元の工事事業者が詳細設計に対応できるだろうか」という声を多くいただきます。

実際、施工経験は豊富でも、設計図や数量計算書の作成には慣れていない工事事業者も少なくありません。事業体が詳細設計の一部を工事事業者に任せようとしても、地域内に対応できる工事事業者がいなければ、導入は進みません。

ここで活用できるのが、設計支援ツールです。決まった考え方に沿って配管を検討し、図面や数量の作成を支援できれば、担当者の経験によるばらつきを抑え、発注者にとっても確認しやすい成果物につなげやすくなります。小規模簡易DBでは、工事事業者が現地調査を行い、管の配置や使用する材料を検討し、詳細設計図や数量計算書を作成します。

工事事業者がこれらの業務に不慣れな場合、設計に時間がかかったり、事業体による確認や指導が増えたりする可能性があります。事業体の負担を軽減するために導入した方式でも、工事事業者の設計を十分に支えられなければ、かえって双方の負担が増えることも考えられます。

小規模簡易DBの導入を進めるためには、発注方式を変えるだけでなく、詳細設計を担う工事事業者の体制も併せて整える必要があります。

05 工事事業者の詳細設計を支える「PIPE-Pro」

クボタは、工事事業者の詳細設計を支援するツールの一つとして、「PIPE-Pro(自動配管設計支援システム)」を提供しています。PIPE-Proは、工事事業者が管路の詳細設計を検討する際に活用する設計支援ツールで、事業体が直接操作するものではありません。事業体の皆さまには、小規模簡易DBを検討する際に、地元工事事業者へご紹介いただく選択肢の一つとして位置づけています。

小規模簡易DBでは、受注後の詳細設計が重要な工程になります。PIPE-Proのような設計支援ツールを活用することで、工事事業者は図面作成や数量確認を進めやすくなり、発注者も提出された設計内容を確認しやすくなります。あわせて、施工管理を担う「施工情報システムⅡ」を活用すれば、施工品質の確保やさらなる業務効率化も図れます。

つまり、小規模簡易DBと設計支援ツールは、並列の施策ではありません。主役はあくまで「小規模簡易DBという発注方式」であり、ツールはそれを現場で機能させるための支えです。小規模簡易DBを導入した場合、工事事業者は、事業体から示された概略設計図をもとに詳細設計を作成します。PIPE-Proは、この詳細設計の作業をデジタルで支援します。

PIPE-Pro(自動配管設計支援システム)の操作画面イメージ

PIPE-Proによる自動配管設計のイメージ

工事事業者にとってのメリット

  • 管路の詳細設計を進めやすくなる
  • 設計経験が少ない担当者でも作業手順をそろえやすい
  • 図面作成や数量確認の負担軽減につながる
  • 社内で設計業務を担える人材の育成を支援できる

事業体にとってのメリット

  • 地元工事事業者に小規模簡易DBへの参加を促しやすくなる
  • 工事事業者から提出される設計内容を確認しやすくなる
  • 詳細設計や設計変更に関するやり取りを効率化できる
  • 設計から竣工までの一連の業務を進めやすくなる

PIPE-Proの具体的な画面や設計の進め方は、後述の無料Webセミナー「PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)」でご紹介しています。小規模簡易DBの導入をご検討中の事業体の皆さまは、地元工事事業者へご紹介いただく前の情報収集として、ぜひご参加ください。

06 よくある質問

セミナーやお問い合わせで、よくいただく質問にお答えします。

Q. 小規模簡易DBは、一般的なDB方式と何が違いますか。
A. 小規模簡易DBは、小口径で施工延長が比較的短い管路工事を対象に、概略設計と概算数量で発注し、工事事業者が現地調査にもとづいて詳細設計と施工を担う方式です。大規模な管路DB方式とは異なり、通常の管路工事に近い規模と入札方法での実施を想定しています。

Q. 技術職員が少ない事業体でも始められますか。
A. 小規模簡易DBは、発注前に事業体が担っていた詳細設計の一部を工事事業者へ移すことで、設計、発注、設計変更などを含む事業体の業務負担を軽減することを目的としています。対象とする工事を選定し、まずは一件から試行する方法も考えられます。

Q. 工事事業者が詳細設計に対応できるか不安です。
A. 詳細設計への対応は、小規模簡易DBを導入する際の重要なポイントです。工事事業者には新たな役割が生まれますが、現地を確認してから設計できるため、現場に合わない図面による手戻りを減らしやすくなります。あわせて、PIPE-Proのような設計支援ツールを活用することで、図面作成や数量計算書の作成を支援できます。

Q. 事業体の職員もPIPE-Proを使用できますか。
A. PIPE-Proは、詳細設計を担う工事事業者向けの設計支援ツールです。事業体職員向けには提供していません。事業体には、小規模簡易DBの導入にあたり、地元工事事業者へ設計支援の選択肢としてご紹介いただくことを想定しています。(事業体・コンサル向けには、(株)管総研〔弊社グループ会社〕提供の「AQUAΣ-SUPER」をご検討ください。)
参考URL:https://www.kubota-kansouken.co.jp/products/aqua.html

Q. 詳細設計を工事事業者に任せると、全体の期間が長くなりませんか。
A. 小規模簡易DBでは、工事事業者が概略設計をもとに、現地の状況を確認しながら詳細設計を行います。工事単体の工期だけではなく、事業体による発注前の設計から工事、竣工までを含めた全体の期間で効果を確認することが重要です。

Q. 詳細設計やPIPE-Proの費用は、どのように積算しますか。
A. 事業体がPIPE-Proの利用料を直接積算する考え方ではありません。工事事業者が担う詳細設計について、コンサルタントへ詳細設計を発注する場合の費用相当額などを参考に、必要な設計費用を積算する考え方になります。施工情報システムⅡをあわせてご活用いただく場合は、その使用料を工事事業者から見積を取って積算いただく形になります。具体的な積算方法は、事業体の基準や工事条件に合わせて確認する必要があります。

07 こんな方におすすめします(無料Webセミナーのご案内)

  • 技術職員が減り、管路更新工事の設計、発注、監督体制に不安がある方
  • 必要な管路更新を進めるため、新しい発注方法を検討している方
  • 小規模簡易DBに関心はあるものの、具体的な進め方が分からない方
  • 地元工事事業者と連携し、地域の施工体制を将来に残したい方
  • 工事事業者の詳細設計を支援する方法を探している方

事業体向け 定例Webセミナー(参加無料)

本セミナーでは、限られた職員体制でも管路更新を進めるための「小規模簡易DB発注方式」と、工事事業者の詳細設計を支援する「PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)」、施工管理を支える「施工情報システムⅡ」をご紹介します。

小規模簡易DBの基本的な仕組み、従来方式との違い、導入時に想定される課題、そして工事事業者の設計体制を支える方法について、分かりやすくご説明します。

日程は「PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)」と「施工情報システムⅡ編」の2種類をご用意しています。
小規模簡易DBの導入をお考えでしたら、まずは詳細設計を支えるPIPE-Pro編からのご参加がおすすめです。「まずは仕組みを知りたい」「自分たちの事業体でも導入できるか考えたい」という段階でも、お気軽にご参加ください。

  • 対象:水道局の皆さま(経営層・管理職・技術職員)
  • 形式:Webセミナー(Teams・ライブ配信)/約60分
  • 参加費:無料(事前申込み制)

開催日程(2026年開催予定)

開催日 時間 テーマ(ご紹介システム)
2026年9月11日(金) 13:15〜 施工情報システムⅡ編
2026年9月30日(水) 13:15〜 PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)
2026年10月29日(木) 10:00〜 施工情報システムⅡ編
2026年11月13日(金) 10:00〜 PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)
2026年11月18日(水) 10:00〜 施工情報システムⅡ編
2026年12月10日(木) 13:15〜 PIPE-Pro編(自動配管設計支援システム)
2026年12月16日(水) 13:15〜 施工情報システムⅡ編

※最新の開催予定はお問い合わせください

お申込み・お問い合わせ

下記の固定申込みフォームから承ります(回ごとにリンクは変わりません)。お申込みの際は、ご希望の開催日とテーマ(PIPE-Pro編/施工情報システムⅡ編)をお選びください。

まとめ

  • 小規模簡易DBは、概略設計と概算数量で発注し、契約後に受注した地元工事事業者が現地調査にもとづき詳細設計を行う発注方式。
  • 発注者は設計・積算・変更対応の負担を軽減でき、早期発注や発注の平準化、地元工事事業者の確保・育成にもつながる。
  • 導入のカギは、詳細設計を担う工事事業者を支えること。設計支援ツール「PIPE-Pro」がその一助となる。
  • 仕組みやPIPE-Proの詳細は、事業体向け無料Webセミナー(PIPE-Pro編)で紹介。まずは仕組みを知りたい段階でも参加可能。

この記事を読まれた方には、こちらもおすすめです

監修者・取材先

WATER KNOWLEDGE PARK編集部

株式会社クボタ パイプシステム事業部

創業から130年以上にわたり水道インフラを支えてきたクボタ。設計・施工・維持管理まで水道事業を一貫して支援し、KSISブランドのもとデジタルソリューションを展開している。